最近では毎年、年間150例を超える人工関節の手術をおこなっており、安定した術後成績を残しています。さらに当院では両膝が悪い場合、両側同日人工関節置換術(一度に両方の膝の手術を行うこと)を多数おこなってきました。また、輸血の副作用に配慮して予定手術ではご本人の血液を貯血(前もって採血し保存しておく)し、手術の際の出血に備えます。金属のアレルギーのある方にはセラミック製の人工関節もおこなっております。膝関節についていえば、以前は「膝が良く曲がる」という点に重点を置いた時期がありましたが、むやみに可動域(曲がりが良くなること)を追及することの危険性に気づき、以来、安全に長く使ってもらえる人工関節手術を実践しております。
また、当病院では人工関節術後の経過はお元気になられても年1回は通院していただくようにおすすめしております。これは長年の使用に耐えられず、不具合が起こってもすぐには強い症状にならないからです。ちょうど車の車検のようにずっと見ていくのが大事であると考えております。また、日常の診療に加えて、人工膝関節置換術についての様々な学会での発表を多数おこなっております。
新しい知見(見解)をひろく全国の先生に発表し、学会上で指摘を受け、さらに良いものを生み出すことにより、より良い医療を患者様に提供する。決して独りよがりで片寄った知識にならない様に努力いたしております。
~ MIS (最小侵襲手術) について~
今、世界中の学会で MIS (最小侵襲手術)の反省がおこなわれています。 MIS がなぜ悪い?傷が小さいほうがいいのでは?もちろんそうです。でも傷が小さいのが MIS なのでしょうか?答えは NO (ノー)です。外見上、手術創が何センチであるとか「小ささ」を競うあまりに、内部の組織のダメージが強くなったり、設置方向がずれたり、術中に骨折を起こしたりすることが報告されるようになりました。 MIS はむしろ早期回復のために体に対してあらゆる侵襲(ダメージ)を最小限にすることです。
Rapid recovery (ラピッドリカバリー:早期復帰) と言い換えたほうがいいでしょう。 決して傷の小ささを誇示せず、より短時間に、より出血量を少なく、早期に歩くことができるような MIS 手術をおこなっています。実際、ほとんどの方が翌日から(短距離ですが)歩行が可能となっています。両膝の同時手術ができるのも手術時間や出血量が少ないからできるのです。両膝の手術の方も翌日から歩く練習を始めます。また、 変形の軽い方には 関節のごく一部を人工のものに変える特殊な人工関節も多数おこなっております。この方法ですと、リハビリも不要で、出血もほとんどありません。
先端のこと学び、そして患者様に還元し、感謝をいただけるならば、これほどうれしいことはありません。当院の待合室に「喜んでもらう喜び」という、清水公照先生(元東大寺貫主)の色紙がかかっていますが、まさに医療人としての病院スタッフの気持ちです。
術前術後の比較写真
人工股関節(術前) | 人工股関節(術後) | 人工膝関節(術前) | 人工膝関節(術後) |
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変形の強い方も術後はまっすぐになります。 |
ビデオ:術前術後比較
右の写真をクリックするとビデオをご覧になれます。患者様のご協力により、術前術後の歩行姿勢の変化を撮ったものです。人工関節手術の成果をご覧下さい。
当院 人工関節置換術 症例数
2009年 | 210症例 (内 膝関節 177症例) |
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2010年 | 241症例 (内 膝関節 200症例) |
2011年 | 235症例 (内 膝関節 191症例) |
2012年 | 219症例 (内 膝関節 172症例) |
2013年 | 261症例 (内 膝関節 216症例) |
過去5年間実績計 1166症例 (内膝関節 956症例) |