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ドクター

執刀医の心のうち

人工膝関節の手術を行うとき、必ずしも完璧にできる(野球で言うところのホームラン)とは限りません。
しかしプロとして、ホームランは毎回打てないにしろ100%のヒットを打たなければそれは
“医道上”不満足です。99%のヒットは1%のアウトが存在するということです。
その1%に当てはまってしまった患者様には申し訳が立ちません。
本当の外科医は決して自分では完璧だなんて思いません。 よく執刀医が患者様、ご家族の前で「手術は完璧でした」と言うことがありますが、これはあくまでも患者様のためを思って発する言葉です。外科医は慢心してはダメで、些細なことであっても常に自らの未熟さを認識しなければなりません。己の未熟さを知ることで外科医はさらに進歩します。

フランスの外科医パレ(Ambroise Pare)の有名な言葉に「我包帯す、神、癒し賜う」というのがあります。 外科医の慢心をいさめ、謙虚さを尊ぶ名言で、本当にそのとおりだと思いますが、もうひとつ、加えるべき言葉があります。

「我包帯す、患者努力す、そして神、癒し賜う」

やはり術後、がんばって動かして、歩いている患者様はいい術後結果を得ることができます。
一方、まったく自発的にリハビリをなさらない患者様は、それなりに動きが悪いようです。
治りたい気持ち、治したい気持ちはとても大切です。ただこれは、ご本人の気持ちやモチベーションだけで なく体を動かすのが精一杯で、意欲も減退されてから手術を決心なさる超高齢の患者様が増えてきたので、 一概に努力だけではいかんともしがたい面があります。しかし比較的若い方は、 とにかく術後リハビリをがんばってください。

手術はいつごろうけるべきか?

とても難しい問題です。実際の多くの手術を経験してきた担当医と相談するのがいいと思います。
多くの患者様は、人工関節置換術は一度受けていただければ、入れ替え(再置換)は不要です。
しかし若くして手術を受けられた場合、おそらく長期間活発に膝を使う ので途中で再置換は必要でしょう。それでも場合により50歳代で手術を勧めることもあります。
あまり長い間手術をせずに我慢することはいい考えではないと思います。
我慢した期間、辛い人生を送ることになりかねないからです。
筋力、気力、そして未来の豊かな生活がまだ十分残っているうちに手術を受けるべきだ と考えております。
とにかく早くよくなって、少しで長く豊かな生活を送ることができれば。。。。と思っております。
当院の人工関節手術の特徴は、ほかのどの病院よりもきっちりとした術前計画のもと、緻密な計測に基づいて手術を行っております。術後も詳細な調査を何年も続けています。
人工関節手術は退院して良くなって「ハイ終わり」ではありません。
ご縁があって手術をお受けになった患者様とは一生のお付き合いになります。
“一生の責任を持って診てゆく、その始まりが手術である”というのが我々のポリシーであり、 一人の執刀医が責任を持って手術できる件数は年間150関節くらいじゃないかと考えております。

最後に、ここ1年、以前にも増して多くの患者様がおいでになりました。
私共のところで手術が終わった患者様のうち、何人の方が100%の満足を得られたでしょうか?
残念ながら手術前の想像していたほど結果が芳しくなかった方もいらっしゃるでしょう。
そういう方に、私共は何をして差し上げることができるのか? きっと一緒に歩むことであると考えております。
多くの専門病院が(残念ながら)そうであるように、手術終了してそれで“主治医-患者関係は終わり” ではなく、今よりも少しでもよくなるように、一生涯ともに考えていきましょう。


藤井 唯誌



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